Dolby Atmos ミキシング

サラウンドミックスの心地良さ

初めて Dolby Atmos を用いて、サラウンドミックスというのに挑戦してみました。一般的にステレオパンは音の定位をどこに持って来るのかを決める訳ですが、サラウンドパンを使うと、自分を中心に、どの位置に音源を持ってくるのか、というのを細かく決める事ができます。ステレオの音源なら、それをどの程度広げてどの方角から鳴らすかというのを決めるのです。

このサラウンドパンナーの使い方がイマイチ詳しく載ってるサイトが見つけられなかったので、ヘッドフォンモニタリングで分かったことを書いておきます。

Angle正面を0°とした水平面上の音の方角
Diversity0だときっかりその方角から音がして、数字を増やすと定位がぼやけ、1.0にすると全方向、つまり定位なしとなります。
Elvation水平面を0°とした音の仰角。
Spread音の広がり具合。0°にするとモノラルになるのかな?
スピーカーマーク青が L, R, C, Lmid, Rmid, Lsur, Rsur の7つのスピーカーの ON , OFF を切り替えます。緑が Ltop, Rtop のスピーカーのON , OFF
Planar平面的な空間でパンニングするモード。
Spherical半球的な空間でパンニングするモード。
Center Levelセンターチャンネルに送るレベル。
LFE LevelLFE チャンネルに送るレベル。LFEはパンナーの影響を受けないチャンネル。主に低音用らしいが・・・。
Surround Panner のパラメータ

Dolby Atmos専用3D Object

サラウンドパンナー設定は、ドラムやベースなど、基本動かさないものをパンニングします。それに対して、空間上を移動する音は 3D Object としてパンニングします。Atmosでは、この自由に動かせる Object を 118 ch分定義できます。ステレオの音源を使い場合は 2ch 消費しますが、ものすごい数の音を動かせる訳です。しかも、Atmos の音源はビットレートが48kHzか96kHzでなければならないとのことなので、録音する場合は48kHz以上で録音した方が良さそうです。

ただ、この動きをオートメーションで描いていくのがなかなか難しい。そこで、とりあえず、オートメーションモードを Touch にして、再生しながらマウスで動かして描いていくのが良いように思う。

バウンスと書き出し

バウンスは 2ch や5.1chサラウンド等にミックスダウンする時に行う作業で、書き出しは ADM BWF マスターファイルを出力するときに使うらしい。今度ストリーミング配信する時は、Dolby Atmos フォーマットで提出してみようと思う。

マスタリング

サラウンドミックスは、普通のステレオミックスと違って、マスタリングという概念がありません。チャンネルがたくさんあるので、どこまでブーストできるのかというのが、再生環境に依存するからだと思うのです。しかし、私のようにヘッドフォンでしかミックスしない場合は、バイノーラルレンダリング時にクリッピングを起こさないようにすればいいと思うのです。レンダラーに Dolby Renderer を使ってモニタリングすると、レンダラー内でリミッターが自動的に働いて、0dbを上回らないようにしてくれます。しかし、Apple Renderer を使ってモニタリングすると、簡単にピークオーバーします。ただし、聴覚上はそれほど気にならないのです。Apple Renderer は、Apple Music が空間オーディオを再生する際に使われる Renderer という事なので、Apple Muisc で配信された時にどう聞こえるかをテストできる程度に考えておいた方が良さそうです。

ただし、Apple Renderer でピークオーバーしているということは、全体的な音量が大きいという事なのかもしれません。そこで、サラウンドバスにマルチバンドコンプレッサーを挿入して、全体的なコンプをかけてみることにしました。

マルチバンドコンプは、サラウンドバスに対して、チャンネル毎にもかけられるし、グループを作ってグループ毎にかけることも出来るので、L-Rグループ、Lmid-Rmid-Lsur-Rsurグループ、C-Ltop-Rtopグループ、LFE と、4つにグルーピングして、L-Rでは中域を強調、両脇後はドンシャリ気味にしてみたところ、全体のもっさり感が取れて、マスタリングに近い効果を得る事ができたような気がしています。

実際の音

まず、普通にステレオミックスした音源がこちら。マスタリング処理をしているので、音圧はこちらの方が高いように思います。

Dolby Atmos Renderer を使って、ヘッドフォン用にサラウンドミックスした音源がこちら。音の立体感は明らかにこっちの方が出ています。

一長一短あるのかもしれませんが、North East Music では、空間オーディオの可能性を探っていこうと思います。

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